良質なモノローグ(独白)はそれだけで、質の高い芝居を観るのと同じようにさまざまな経験をさせてくれます。モノローグはキャラクターが今まさに直面している「思考の旅」とも言うことができます。よく訓練された俳優は、そのことを知っているのです。フランスの演出家、アリアーヌ・ムヌーシュキンは「空間を内包しないものは舞台ではない」と言っています。良質なモノローグは、空間の広がりがあり、呼吸を操り、思考のプロセスを伝播させ、観客の経験を喚起します。―耳に心地良いだけではなく、わたしたちの世界を根本から変えてしまうような、観る者の魂を揺さぶる力強いモノローグを操ることができたら―良い俳優は、実に様々な技術を用いてそれを可能にします。感情、呼吸やイメージ、音素の響きと種類、そして肉体。これらをきちんと扱うことで、わたしたち舞台に立つ俳優の肉体は、モノローグそのものが持つ意味を超える強烈な力強さを湧き出だすのです。それが観客に伝わり、感情が創起され、そのキャラクターの思考を経験させていきます。モノローグにはドラマがあり、キャラクターの思考は右へ左へ上へ下へと様々な方向に旅し、わたしたちの感情を揺さぶります。またこのクラスでは、Political Speech(スピーチ)も扱います。あまり日本の演劇教育の中でも扱われることが少ないものですが、チャップリンの「独裁者」を見ても分かる通り、俳優には必須の技術です。論理的に話されている内容であってもdriving thought(思考を動かすこと)があり、それはあたかも旅の乗り物のように、観客を乗せ感情を揺さぶります。「思考の旅」の果てに何があるのか。わたしたちと一緒に、あなたのモノローグを、ひいてはあなた自身を今まで以上に魅力的にする旅に出てみませんか?