〜集団のリズムに乗る〜ギリシャ古典劇でよく出てくるコーラスをご存知ですか?日本語では「コロス」と表現されたりする彼らは本来何者なのでしょうか?彼らはとても力強く集団で動きます。それはまるでスイミーのように、ひとつの生命体として舞台上で息づいています。コーラスは、個では表現できない力強いものを彼らはみせてくれます。例えば運命。例えば世界の流れ。例えば感情。あるいはキャラクターが決断した何かをより大きく魅せる、楽器のアンプのような役割を担うこともあります。劇世界に存在する、こういったコーラス・アンサンブルの要素は、デバイジング(集団製作)でもとても有効に用いられます。アンサンブルワークは現代でもイギリスを初めとし、様々な世界の演劇を牽引しているカンパニーの劇中で活用されているのです。(クラスフォト アンサンブル)ところがこのアンサンブルワークは非常に繊細なもので、きちんと機能するとまるで波の重ね合わせの原理のように爆発的な効果がありますが、そうでないとお互いに相殺することで機能しなくなってしまいます。魚や鳥の群れを見ていると、この機能がとてもよく働いているのがわかります。彼らには厳密にリーダーというものは存在しません。集団として動く中で役割が生まれ、属する個々がまるで大きな生命体のひとつひとつの臓器のように、もっと小さな一個ずつの細胞のように、お互いの存在を受け入れ合いながら、役割を正確に(ここでいう「正確」とはタイミングやスペース、リズムに関することです)こなしていきます。そうでなければ、アンサンブルの持つ本来のポテンシャルを引き出せないのです。そのためには、トレーニングが必要です。コーラス・アンサンブルはピンを張れない役者に与えられる、つまらない役割では決してありません。それどころか、そこには厳格なトレーニングが存在し、歴史があり、ストーリーの中核を成す、多くの場合必須の魅力ある存在です。劇作を活かすも殺すも、彼らの練度次第といっても過言ではありません。本当にうまく機能するアンサンブルは、美しい魚の群れを見るように、ただそれだけで見る価値のある存在なのです。太古より受け継がれてきたこの劇作の原点的役割を、一緒に学んでみましょう。