〜古典喜劇から劇構成の基礎を探る〜"We must be allowed to insult each other."-Rowan Atkinson「私たちは罵り合いを許すべきだ。」-ローワン・アトキンソンヒューマンコメディとして名高いコメディアデラルテ(Commedia dell’Arte)。イタリアで発祥し、広くヨーロッパで広がった喜劇。舞台で演じられることもありましたが、その多くはストリートパフォーマンス(野外劇)であったとされています。ストックキャラクター(人格がストーリーによってまちまちではなく、どの物語でも基本的に同じ名前/人格)の存在、喜劇、その後の芸能の基盤となっているパフォーマンスという点が日本の狂言とも共通点が多く、日本人にも馴染みやすいと考えています。例えば印象的な長い鼻のカピターノというキャラクターは、いつも戦争での武勇伝を大仰に語りますが、とても小心者で少しのことでもビクビクしてしまいます。ドットーレは博識でよく喋り、異性との会話が上手ですが、その言葉はあまり意味をなさず、よくわからない困った系おじちゃんです。中でも有名なアルレッキーノ(ハーレクイン)は曲芸ができ、極悪非道ではないものの、残忍さを持ち合わせる無邪気な子どものようなキャラクターで、ハムレット俳優ならぬアルレッキーノ俳優というのも存在するほど特殊かつ技術の求められる、とても魅力的なキャラクターです。(コメディア・デラルテ クラスフォト)基本的にストーリーは口伝えや即興でその多くが失伝しており、今なおさまざまな人たちが研究を進めています。職業俳優集団として最初期の形態とも言われ、20世紀を代表する演出家たちもみな学びの対象としているものです。その中には、今ある舞台の根源のような、本質的な演劇の役割が息づいています。この学術的にも興味深いジャンルに取り組むことで、第四の壁で一旦離れてしまった「観客」と「俳優」、そして「ストーリー」の三つ巴の関係性を見直し、その更なる可能性を追求することができます。今、イマーシブシアターなど、その今まで当たり前とされた関係性を積極的に見直し、別の形で再構築する動きが盛んな中、このワークに取り組むことが多くのジャンルで求められていると感じています。現代の海外の演劇学校では当たり前にカリキュラムに組み込まれているのも、そういった理由によるものです。またマスクを使ったワークをうまく機能させる為には様々な舞台の俳優技法に取り組む必要があり、トレーニングとしてもとても重要な役割を果たします。そんなたくさんの学びを内包するコメディアデラルテ。ぜひ一緒に遊びましょう。