私にとって、演劇とは「生きること」を学ぶものです。人と話すこと一つとっても、どのように話すのか、そのときにどのように感情が動くのか。それは自然な動きや反応なのですが、どこかで演技してる自分もいる。逆に言えば舞台上で演技している時も「生きること」をしている時なのです。今回初めて海外の演劇の考え方について触れたのですが、まさに「生きること」を学ぶことができたのではないかと思いました。私にとっては確実に大きな一歩になったと思います。まず、WS1日目には、今回のWSにおいて通して考えられる基礎のようなものを教えてもらってから始めました。『役者はキャラクターになりきるのではなく、Gameによって役者とキャラクターの間をつなぐのだ。』私は、役者はキャラクターになりきるだとか役者とキャラクターの間をうまく調節して演出家が求めるキャラクターにできるだけ役者の、ありのままの自分を近づけるものだと考えていました。ですがそれがとても辛かった。演じることが、「生きること」を学ぶ演劇が好きなはずなのに、脚本家・演出家によってそれが妨げられてしまう。でも脚本家・演出家がいないと演劇なんてできないし、自分がそれをしながら役者でもあることなど私には到底できないので、満足のいく演劇ができませんでした。ですが “Gameが役者とキャラクターを繋ぐ” という考えを教わり、今まであった肩の荷がスッと降りたような感覚になりました。キャラクターで遊んでいいんだ、演じる自分を楽しんでいいんだ、と思いました。でも “Game” と一口にいってもそれは “Serious game” であることも同時に学びました。『Theatre is serious game as children play.』この言葉が、私に “Game” の意味を履き違えないようにある程度の錘を与えてくれました。この考えを教えてもらってから、楽しいゲームが始まりました。それは私が真に熱中できるものからそうでないものまで。ゲームが終わると、そのときに感じたことや、なぜそう感じたかの話し合いが行われました。その中で達也さんからフィリップ・ゴーリエや様々な著名人の言葉を借りたフィードバックがされました。真に熱中している間は自分はどのように感じたのか、それが他の参加者たちからどう見えていたのか、また逆に熱中できなかったゲームはなぜ熱中できなかったか。たくさん話し合いが行われました。その中で私が1番大切だと思ったことをここでお話しします。それは、『「上手くやろう」とせず、もっとやってやろう、 “リスク” をとってこのゲームを楽しんでやろうとすることが悦びである。それは、失敗する可能性も大いにあるけど、勝率100%のゲームは面白くないよね。』という達也さんや他の参加者の言葉です。1日目のWSでは、初めてのメンバーに初めてのワークだったので、私の中ではあまり「上手くやろう」とせず、初めてのことを楽しもう、とワークをすごく楽しめました。ですが、2日目以降、1日目にやったことを行なったりすることもあったので、ワークの中で「上手くやろう」の精神が働いてしまい、楽しめないことが増えました。3、4日目はもろそれです。昨日やったよね、というようなことが増えてきたり、今まで私が演劇のWSで経験したことがあるようなワークもありました。そのため、私の1番良くないと思う癖である「上手くやろう」が働き、全く楽しめなくなりました。他の参加者が『上手くやろうとせず、熱中すると、勝敗などどうでも良く感じ笑けてくるのでそれが楽しかった』と言っていたり、『楽しもうとすると楽しめなくなるので、自分の中でチャンネルを変える感覚で楽しむことが大切』と言っていました。それを受けて、確かにその人たちは舞台上で、ゲーム中に輝いていたなと思いその人たちに少しでも近づこうと私も自分なりに意識を変えてみたり、時には達也さんに相談してみたりしました。4日目の後半のワークで、「早く喋りながらゆっくり動きを行い、そのリズムの差を楽しむ」というワークを行いました。私はその1日楽しめていなかったことを反省していたのですが、このまま楽しめなかった、とWSを終えるのが嫌で、次のゲームでは楽しもう、次のワークでは楽しもうと自分で自分を追い込んでいました。最悪のコンディションに、私の苦手である “喋る”ワーク。他の参加者達が楽しそうにこのワークを行なっている中、私は何話そう何話そう、とばかり考えていました。私の番が来て、何話すか決まってない、まずい、と思いました。ですが、「何話すか決まっていないのに、話すのが苦手な自分がこのワークをすることを楽しんでみよう」と思ってワークに取り組むと、なんと、観客である他の参加者の皆さんから笑いが絶えない状態になりました。今でもとても嬉しく、思い出します。喋るのが苦手なのに、話す口が止まらず、同時に動きをゆっくりにしてみてそのリズムの違いを楽しむことがとても心地よかったです。私は苦手なことがあると、いつもなぜできないのか、と自分を責めてしまっていました。今回のWSでも “喋る” ワークがあるときに「どうせ自分はできない」と諦めたり「なぜできないのか、そんな自分が嫌で仕方ない」と責めてしまったりしていました。私はとても自己肯定感が低いので、「こんな自分が舞台上に立つことは許されない」と感じてしまうこともありますが、『愛されない人なんていない』と達也さんから教えてもらい、『ステージに立っていいんだ、私は1人じゃない』と他の参加者が言っていたのを受けて、意識が少しだけ変わりました。それを意識して自分を大切にしながら、ゲームを楽しみ、そこから得る悦びを1番大切にする。レジュは、演技のスタートラインに立つWSと紹介されていましたが、まさにその通りだと思います。私は、このWSを受けて確実に変わったと思いました。それも、私の望む方向に。このWSは、私のように演劇を始めたての人に勧めたいです。もちろんそうでない人にも。参加者の中には演劇を初めてかなり経っており、演技がとても上手な方もいらっしゃいました。そんな人にも、新たな発見があったと言わせるようなWSです。私はこのWSに出会えて、本当に変わったと思います。また達也さんが講師を務めるWSに参加したいと心から思います。