達也さんについて言うと、まず「俳優としてこんなにもきちんと訓練された身体」を持っている人はなかなかいないと思います。日本ではほぼ見たことがありません。そして、自身が体得されているからこそ、その身体を手に入れるためのプロセスを本質的に理解しており、出し惜しみなく分け与えてくれます。私はもともと達也さんがイギリスで通っていたドラマスクールEast 15 Acting Schoolの出身です。達也さんはフィジカルシアターコース、私はアクティングコースを出ています。当時あまりにも若く、何も分かっていなかった私は、「アクティング」の授業には全力投球だったものの「ムーブメント、身体表現」のクラスは、今やっていることがどこに繋がっているのか、これが良い俳優になるためどう役立つのか、いまいち理解していませんでした。そんな訳で、そこまでの情熱を傾けられていなかったのが正直なところです。ところが卒業して、実際に俳優として働き始めると、自分で考え、自分の責任で俳優としての道を極め始めることになります。そのうちに段々と「芝居、俳優」というものを理解し始め、「当時やっていた身体表現が、俳優にとっていかに必要不可欠なことであるか」「俳優としての身体、つまり適切に動ける、反応できる身体、を訓練で手に入れることがどれだけ重要なことか」を痛いくらいに理解し始めたのです。そして何のためにやっているのかさっぱり分かっていなかった数々の訓練が、いかに完璧に設計されていたかに気づきました。しかし、やり直したいと思ったところで時すでに遅し。日本でそんなことを実践できる場所はなかなかありません。そんな時に思い出したのが身体演技の専門家、達也さんの存在でした。教えるって、難しいことです。まず、自分が教える事柄について、深く理解していなければいけない。そして生徒が実際にやっていることを適切に見て、感じ、フィードバックする能力が必要です。達也さんはこの二つが揃っています。そして何より、舞台芸術に対する深い愛があります。それゆえに、探究をやめないし、同じ芸術を志す仲間への愛があります。こんなにも深く、本質的に、演じるという芸術を探求できる場所、なかなかありません。過去の自分にも声を大にして言いたいところですが、「心理」に傾き、「真実」が全てだと思っているすべての俳優は、目を覚まされると思います。でもそれと同時に、「心理」を探求して「真実」を追求した経験があるからこそ身体的な能力と、客観性という新たな武器を手に入れることで、全てを融合させて一段レベルの違う俳優になれるのではないかと思っています。P.S.ちなみに、日本ではなかなか理解されないので達也さんのためにも自分のためにも言っておきますが(笑) イギリスの名のある演劇学校って、まず入学のハードルがとても高いです。オーディションの倍率でいったら東大入学以上。そして、入学した後もとても厳しい。朝から晩まで 週5日、みっちり俳優として訓練されます。だからこそ、とても刺激的で貴重な日々ですが、大変は大変。そんな中で得た濃厚な教えを、良心的な価格で提供されているのも、達也さんの舞台芸術に対する愛ゆえだなぁ、と思い、心から尊敬しています。本質的かつ良心的、出し惜しみがなく常に全力。短くまとめるとこんなところかな。そんな訳で、とってもおすすめ!